バセドウ病(甲状腺機能亢進症)とはどんな病気?原因・症状・治療法を解説
バセドウ病とは
バセドウ病とは甲状腺の機能が亢進する病気です。
甲状腺の機能が亢進することで、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されて代謝が活発になり、全身にさまざまな症状が現れます。
バセドウ病は比較的女性に多く認められる病気で、男女比は1:3~5ほどの割合で発症します。
好発年齢は男女共に30~40代です。
しかし、バセドウ病の症状は更年期障害の症状に似ているため、更年期が原因の体調不良だからといって放置せず病院を受診してみましょう。
甲状腺ホルモンの役割とメカニズム
甲状腺とは、喉仏の下にある15~20g程度の蝶が羽を広げたような形をした小さな臓器です。
甲状腺ホルモンを分泌し、新陳代謝の促進や成長、交感神経への刺激など、体調の維持に関わる重要な役割を担っています。
しかし、甲状腺ホルモンは過不足がある状態では体にいい影響を与えません。
そのため、通常は過不足がないよう、甲状腺ホルモンの分泌量を調整しています。(フィードバック機構)
上記の図表のように甲状腺ホルモンを分泌し、一定の濃度まで達すると甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を抑制します。
バセドウ病の原因
脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が、甲状腺の濾胞細胞にあるTSH受容体と結びつくことで、甲状腺ホルモンを生成しています。
しかし、甲状腺に自己免疫反応が起こると、TSH受容体に自己抗体(抗TSH受容体抗体、TRAb)が作られてしまいます。
TSHの代わりにTRAbとTSH受容体が結合して甲状腺を刺激するため、甲状腺ホルモンの分泌量が必要以上に増えてしまうのがバセドウ病です。
現状では自己抗体が作られる原因は解明されていませんが、自己免疫機序によるものだと考えられています。
バセドウ病の発症においては、遺伝的要因(バセドウ病を罹患しやすい体質)に加え、ウイルス感染、ストレス、妊娠・出産などが原因となっているのではないかと考察されています。
バセドウ病の症状
バセドウ病では甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、以下のようなあらゆる症状が現れます。
- 全身症状:暑がり・疲れやすい・体重減少・発汗・皮膚の熱感(ほてり)
- バセドウ眼症:上眼瞼後退・眼球突出・複視・眼瞼浮腫・角結膜障害
- 精神症状:イライラ感・落ち着かない・集中力や思考力の低下・不眠・せん妄状態
- 循環器症状:動悸・息切れ・収縮期高血圧の上昇・拡張期血圧の低下
- 消化器症状:食欲亢進・下痢・軟便・排便回数の増加
- 筋骨症状:脱力感・筋力低下・手のふるえ・周期性四肢麻痺(男性のみ)
- 浮腫:限局性粘液水腫
- 月経:月経不順・無月経
上記の他に、バセドウ病の特徴的な症状としてメルセブルグの3徴と呼ばれるものがあります。
出現する症状は次の通りです。
- 甲状腺腫(甲状腺が腫れる)
- 眼球突出(眼球が押し出されたかのような状態)
- 頻脈(脈拍が速くなる)
バセドウ病の合併症
バセドウ病には以下のような合併症が引き起こされることがあります。
- 甲状腺クリーゼ
- 周期性四肢麻痺
次項より、それぞれの病態を解説します。
甲状腺クリーゼ
甲状腺クリーゼは重度の甲状腺中毒症に強いストレスが加わることで、複数の臓器の機能不全をきたす病態です。
強いストレスとは、感染・外傷・手術・精神的ストレス・分娩などを指します。
甲状腺クリーゼの症状は以下の通りです。
- 中枢神経症状(不穏・せん妄・精神異常など)v
- 発熱(38℃以上)
- 頻脈(130回/分以上)
- 心不全症状(肺水腫・心原性ショックなど)
- 消化器症状(嘔吐・下痢・黄疸など)
甲状腺クリーゼは命にかかわる状態となるので、緊急治療を要します。
周期性四肢麻痺(脱力発作)
四肢麻痺はバセドウ病に罹患している若年男性に認められる症状です。
糖質の摂取や飲酒、激しい運動によって誘発され、四肢の脱力発作は数時間~数日で回復します。
血糖値の急激な上昇に伴うインスリンの分泌によって、血中カリウムの濃度が高くなることで低カリウム血症となり発作が起こるとされています。
バセドウ病の治療
バセドウ病の治療は病状や経過により、以下の3つから選択します。
- 薬物治療(抗甲状腺薬)
- 放射性ヨウ素内用(アイソトープ)療法
- 手術療法(甲状腺摘出術)
それぞれの治療法を簡潔に解説していきましょう。
薬物治療(抗甲状腺薬)
薬物療法は多くの患者さんに第一選択として行う治療です。
甲状腺ホルモンの合成を阻害し、甲状腺ホルモンの分泌を抑制する抗甲状腺薬を内服します。
- メルカゾール(一般名:MMIチアマゾール)
- チウラジール/プロパジール(一般名:PTUプロピルチオウラシル)
1カ月ほどで症状が改善し、永続的な甲状腺機能低下症となることも少ないです。
しかし、副作用が出現する可能性や投薬中止後の再発率が高いことが欠点として挙げられます。
また、抗甲状腺薬は効果に個人差があるため、長期的に服用することが大切です。
経過観察を行いながら長期間(約2年)継続して服用した後は、以下のような流れで治療を進めていきます。
- 中毒症状の出現もなく、甲状腺の機能が正常に維持できている場合:内服の中止を検討
- 効果が現れない場合:他の治療を検討
放射性ヨウ素内用(アイソトープ)療法
微量の放射能をもつヨウ素の内服によって甲状腺を破壊し、甲状腺ホルモンの合成を抑制する方法です。
効果が早く安全で確実な治療ですが、バセドウ眼症が悪化したり、甲状腺ホルモン薬の内服が必要となることもあります。
また、幼児や妊婦・授乳婦には禁忌、若年者には慎重投与という制限があります。
手術療法(甲状腺摘出術)
甲状腺ホルモンの分泌を抑えるために行う手術で、効果が最も早く確実な方法です。
甲状腺を3gほど残して切除をしますが、副甲状腺も一緒に摘出することから副甲状腺機能低下症となる可能性があります。
手術の合併症が引き起こされた場合は、反回神経麻痺による声のかすれが生じるリスクもあります。
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