ユーロジン(エスタゾラム)の効果と副作用
ユーロジン(エスタゾラム)とは?
ユーロジン(一般名:エスタゾラム)は、睡眠薬としてはベンゾジアゼピン系に分類されます。
ユーロジンは作用時間が比較的長いお薬になり、寝付きやすい土台を作るようなお薬になります。このような睡眠薬ですので、「なかなか寝つけない」という入眠障害だけでなく、中途覚醒や早朝覚醒にも効果が期待できます。
このようにユーロジンは、
- 入眠障害
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
などに効果が期待できます。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、リスクはごくわずかですが眼圧を上げてしまうことがあります。このため急激な失明のリスクがあるタイプの緑内障では禁忌とされていますが、ユーロジン錠は禁忌となっていません。このため緑内障の患者さんにとっては、心理的に使いやすい睡眠薬になります。
ユーロジン錠は発売からしばらくたっており、ジェネリック医薬品としてエスタゾラム錠が発売となっています。
ユーロジンの睡眠薬での位置づけ
ユーロジンの睡眠薬の中での位置づけをみていきましょう。
睡眠薬は、その作用メカニズムの違いから2つに分けることができます。
- 脳の機能を低下させる睡眠薬
- 自然な眠気を強くする睡眠薬
ユーロジンは、脳の機能を低下させる睡眠薬になります。覚醒に働いている神経活動を抑えることで、眠気を促していきます。「疲れきって眠ってしまうとき」に近い状態を作り出していきます。
一方で、自然な眠気を強くする睡眠薬も発売されています。私たちの睡眠・覚醒の周期に関係する生理的な物質がありますが、その働きを調整することで睡眠状態に仕向けていくお薬です。本来の眠気を強める形ですので、効果が人によっても異なります。
ユーロジンなどの脳の機能を低下させるタイプのお薬は、ある程度の効果や副作用が計算できるというメリットがあります。このため、
- 作用時間
- 強さ
から睡眠薬を選んでいきます。
ユーロジンは作用時間は中間型になり、即効性も期待できますが、服用を続けていくうちに薬が体に蓄積していき、寝付きやすい土台を作るようなお薬になります。
効果の強さは標準的にはなりますが、中途覚醒や早朝覚醒が認められている方に使われることが多いです。また、抗不安効果も日中に持続するため、不安や緊張が強い方には使いやすい睡眠薬になります。
ユーロジンの特徴
<メリット>
- 入眠障害に効果が期待できる
- 中途覚醒や早朝覚醒に有効
- 抗不安効果が期待できる
- 緑内障に関する注意喚起がない
- 離脱症状が少ない
- ジェネリックが発売されている
<デメリット>
- 眠気(翌朝への持ち越し)の副作用に注意が必要
- ふらつきの副作用に注意が必要
- 筋弛緩作用から睡眠時無呼吸が悪化することがある
- 高齢者でせん妄を生じることがある
それではユーロジンの特徴を、
- 効果
- 副作用
- 剤形と薬価
に分けてみていきましょう。
ユーロジンの効果
ユーロジンは、脳の機能を低下させることで睡眠を促す睡眠薬になります。
ユーロジンのお薬としての特徴は、
- ベンゾジアゼピン系であること
- 作用時間が比較的長いこと
- 緑内障で注意喚起がないこと
があげられます。
ユーロジンは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されます。このため催眠作用だけでなく、抗不安作用や筋弛緩作用も認められます。比較的に作用時間も長いため、寝付きやすい土台を作るようなお薬になります。このため、不安や緊張を和らげる効果も日中に期待することができます。
またユーロジンは、緑内障に関する注意喚起がなされていないというのが特徴的です。ほとんどのベンゾジアゼピン系睡眠薬や抗不安薬では、緑内障に関する注意喚起がなされています。これはわずかに認められる抗コリン作用によって、眼圧が上がってしまうリスクがあるためです。
しかしながらユーロジンはお薬の説明書(添付文章やインタビューフォーム)に緑内障に関する注意喚起がありません。他のお薬では、閉塞隅角緑内障というタイプの緑内障では禁忌となっています。急激に眼圧があり、失明することもあるためです。
その他のタイプの緑内障ではお薬は使えるのですが、心理的に抵抗が強くなってしまう方もいらっしゃいます。このような場合に、心理的にユーロジンが使いやすいです。
ユーロジンの副作用
ユーロジンの副作用としては、「眠気の持ち越し」と「ふらつき」に注意する必要があります。
ユーロジンは中間型の睡眠薬ですので、翌朝にもお薬の作用が残りやすいです。このため、睡眠作用が翌朝に続いてしまって眠気が残ってしまったり、日中に眠気が出てしまうことがあります。
そしてユーロジンには筋弛緩作用もあります。このため、ふらつきや転倒にも注意が必要です。これによって睡眠時無呼吸症候群が悪化してしまうこともあるため、お薬を使い始めてからイビキがひどくなった方は注意が必要です。
また高齢者では、せん妄を生じやすくしてしまうことがわかっています。せん妄とは、一時的に意識が混濁して興奮してしまい、異常行動などをとってしまう状態です。昼夜リズムが乱れたり、睡眠障害もせん妄の原因となりますが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬はせん妄を悪化・誘発することがわかっています。
ユーロジンは、離脱症状が少ないお薬になります。とはいえ長期に服用していると常用量依存といって、量が増えていくことは少ないですが、減らそうとすると不眠になってやめられず、漫然と服用が続いてしまうこともあります。
ベンザリンの副作用頻度は、
- ふらつき(8.46%)
- 頭がぼーっとする(6.14%)
- 倦怠感(5.52%)
- 眠気(5.46%)
- 頭重(4.46%)
- めまい(1.68%)
- 頭痛(1.12%)
となっています。(承認時調査と製造販売後調査の合計10,613例)
ユーロジンの剤形と薬価
ユーロジンのお薬としての特徴についてみていきましょう。
ユーロジン錠は古くから発売されているお薬ですので、後発品であるジェネリック医薬品としてエスタゾラム錠が発売されています。ただし散剤はジェネリック発売されていません。
それぞれの薬価を見ていきましょう。
- 1mg錠:8.4円(ジェネリック:6.3円)
- 2mg錠:13.3円(ジェネリック:10.3円)
- 1%散:53.1円/g※2018年4月現在の薬価になります。
これに自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。
ユーロジンの用法と作用時間
ユーロジンの用法は、以下のようになっています。
- 開始用量:1mg~2mg
- 用法:1日1回就寝前
- 最高用量:4mg
ユーロジンは1mg~2mgから開始していくことが一般的です。4mgまでは増量することができるお薬になります。ユーロジンは、基本的には空腹時で効果を発揮するように作られているお薬になります。ですから、就寝前に服用してください。
ユーロジンの作用時間は個人差がありますが、お薬の血中濃度の立ち上がりは早いため、効果は比較的に早くでてきます。催眠作用は6~8時間程度になります。その後は抗不安効果や筋弛緩作用が一日を通して持続していきます。そして少しずつ、寝付きやすい土台ができていくような睡眠薬です。
【参考】ユーロジンの半減期
お薬の効き方を見ていくにあたっては、
- 半減期:血中濃度が半分になるまでの時間
- 最高血中濃度到達時間:血中濃度がピークになるまでの時間
が重要になってきます。
ユーロジンは、
- 半減期(T1/2):24時間
- 最高血中濃度到達時間(Tmax):2~5時間(低用量では2時間の報告)
となっています。
血中濃度の立ち上がりは早く、服用直後に一気に血中濃度が上昇します。そしてピークに達したのちに、ゆっくりと血中から抜けていきます。
ですから催眠効果は比較的早く、その作用時間は6~8時間ほどになります。次の日に服用する際にもお薬がのことっているため、服用を続けると少しずつ体内にお薬が蓄積します。連続で服用すると少しずつ安定(定常状態)していき、寝付きやすい土台となります。
【参考】ユーロジンとアルコール(お酒)
ユーロジンの添付文章では、
- 眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が増強することがある。
となっています。禁忌というわけではありませんが、併用注意とされています。
アルコールとユーロジンは、どちらも中枢神経を抑制する作用があります。併用することにより、脳の機能を落としすぎてしまいます。
このためユーロジンとアルコールを併用すると、
- 薬やお酒が効きやすくなる
- 効果が不安定になる
といったことに気をつける必要があります。
ユーロジンもアルコールも、どちらも肝臓で分解されます。このためお薬の効果が翌朝までのこってしまったり、意識が中途半端になることでの健忘やせん妄が起こりやすくなることがあります。また、アルコールに酔いやすくなることにも注意が必要です。
そして飲酒習慣があると、肝臓の機能が変化していきます。このためお薬の血中濃度が不安定になり、効果も不安定になります。
そしてユーロジンとアルコールを併用することでの最大の問題は、
- 双方に依存しやすくなってしまう
という点になります。
睡眠薬のユーロジンとアルコールは、近しい作用があります。このため、どちらも身体に慣れてしまい、効果が悪くなってしまいます。このことを耐性といい、同じ量では効かなくなってしまいます。
体からお薬やアルコールが抜けると心身の不調が認められて、精神的にも依存してしまいます。このように、心身に依存が形成されてしまいます。
ですから、ユーロジンを服用しながらの習慣的な飲酒はできるだけ避けるべきです。飲み会などの機会飲酒であれば、時間を空ければユーロジンを使うことはできます。
ユーロジンと他剤の作用時間と強さの比較
ユーロジンは、脳の機能を低下させることで催眠作用をもたらします。このようなタイプのお薬の効果は、作用時間によって考えることができます。
作用時間によって、大きく4つのタイプに分けられています。
- 超短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は2~4時間
- 短時間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は6~10時間
- 中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は20~24時間
- 長時間型:効果のピークは3~5時間、作用時間は24時間~
ユーロジンは、中間型に分類されます。睡眠時間の全体をカバーするように催眠作用が期待でき、また一日を通して抗不安作用が持続して、寝付きやすい土台を作ってくれるような睡眠薬になります。
もう少し詳しくみていくと、以下の表のようになります。
作用時間の違いごとに睡眠薬としての強さの違いを、最高用量で比較してみましょう。
- 超短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は2~4時間
(ハルシオン>アモバン>マイスリー≧ルネスタ) - 短時間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は6~10時間
(レンドルミン≧デパス≒エバミール/ロラメット>リスミー) - 中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は20~24時間
(サイレース/ロヒプノール>ベンザリン/ネルボン>ユーロジン) - 長時間型:効果のピークは3~5時間、作用時間は24時間~
(ドラール>ベノジール/ダルメート≒ソメリン)
ユーロジンの副作用と対処法
睡眠薬では、作用時間によって注意すべき副作用が異なります。
- 作用時間が長い睡眠薬・・・眠気・ふらつき
- 作用時間が短い睡眠薬・・・健忘・依存性
作用時間が長いということは、薬が身体に少しずつたまっていくことにつながります。睡眠薬の眠気が翌朝に残ってしまったり、筋弛緩作用が日中に働いてしまうことがあります。
それに対して作用時間が短い睡眠薬は、薬が急激に作用するということになります。このため中途半端な覚醒状態となってしまって健忘(物忘れ)が認められたり、お薬の急激な変化に体が慣れようとしてしまうことで、依存が成立してしまうことがあります。
ユーロジンは作用時間が比較的に長いお薬なので、眠気やふらつきに注意が必要です。作用時間の長さゆえに離脱症状は少なく、依存性は高くはありません。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
ユーロジンと眠気
睡眠薬は、効果が翌朝に残ってしまうことがあります。作用時間が長いお薬ほど、眠気や倦怠感が残りやすくなってしまいます。
ユーロジンは中間型に分類される睡眠薬で、作用時間は比較的に長いです。このため、翌朝に眠気が残ってしまうこともあります。睡眠がしっかりとれていても眠気が残るようであれば、ユーロジンによる眠気の翌朝への持ち越しの可能性が高いです。
その場合の対処法としては、
- お薬の量を減らす
- 他の睡眠薬に変える(作用時間の短い睡眠薬)
があります。
ユーロジンと健忘
睡眠薬を服用した後に、記憶がなくなってしまうという副作用が生じることがあります。
このような「物忘れ」を、「前向性健忘」といいます。睡眠薬を服用して、それ以降(前向き)の記憶を忘れてしまうのです。
このような状態になるのは、睡眠薬が中途半端な覚醒状態にしてしまうことで、海馬を中心とした記憶に関する脳の機能が低下してしまうためと考えられています。
ですから前向性健忘は、睡眠薬が急激に作用する時に起こりやすい副作用になります。ユーロジンは作用はそこまで強くはなく、作用時間も比較的に長い睡眠薬になります。ですから、健忘を起こしやすいお薬とはいえません。
健忘の対策としては、
- 寝る直前に睡眠薬を服用すること
- 絶対にアルコールと一緒に睡眠薬を飲まない
になります。
それでも認められる場合は、
- 薬の量を減らす
- 他の睡眠薬に変更する
このようにしていきます。
ユーロジンと依存性
睡眠薬は、長期間服用していると体に慣れてしまいます。そして睡眠薬をやめてしまうと不眠が悪化して、やめられなくなってしまうことがあります。
ユーロジンは作用時間が比較的に長く、離脱症状は起こしにくいお薬になります。このため依存性は高くはありませんが、漫然と服用しているとやめられなくなってしまう常用量依存となってしまうこともあります。ですから、漫然とした長期的に使用は避けなければいけません。
依存性の対策としては、
- 睡眠に良い生活習慣を意識する
- できるだけ少量・短期間で使う
- アルコールと一緒に服用しない
ことがあります。
ユーロジンの反跳性不眠(離脱症状)と減薬方法
睡眠薬は長期間にわたって使っていると、お薬があることに身体に慣れてしまうことがあります。
その結果、お薬としての効果は薄れているのに、薬を減らすと不眠が強まってしまうことがあります。このような状態を反跳性不眠といいます。睡眠薬の離脱症状とも言えます。
「睡眠薬がないと眠れない」と勘違いしてしまうことが多いのですが、薬がやめられないのは反跳性不眠が原因であることも少なくありません。
このような状態になると、睡眠薬の量は増えないけれどもやめられなくなってしまいます。このことを、常用量依存といったりします。
ユーロジンは中間型の睡眠薬になりますので、こういった離脱症状は起こりにくいです。ですから反跳性不眠によってお薬が中止できなくなるというよりは、精神的な依存によってお薬をやめられなくなってしまうことが多いです。
反跳性不眠の様子をグラフにしてみると、以下のようになります。
このためユーロジンを中止していく際は、急激には行いません。
- 少しずつ減量していく
が基本となります。0.5~1mgずつ減量していくことが多いです。
ユーロジンの減薬では、眠れるという自信を失わないことが大切ですので、ユーロジンを減量して寝付けない場合はベッドで粘ってはいけません。すぐにあきらめて、元の量になるようにお薬を追加で服用して就寝してください。眠れるタイミングをみて、少しずつ減量していきます。
睡眠によい生活習慣を心がけることが大切
ユーロジンを使っていくにあたっては、睡眠習慣を見直すことも重要です。睡眠習慣と合わせて取り組むことで、睡眠薬だけに依存することなく不眠の改善を行っていきましょう。
ここでは特に、睡眠薬の使い方に関係する部分についてお伝えします。不眠で寝付けないとき、多くの方が間違った対処法を行っています。
- お酒に頼る
- なるべく早く寝る
この2つは不眠を悪化させてしまいます。お酒は寝つきを一時的に良くしてくれますが、睡眠の質を落としてしまいます。
また、なるべく早く寝てベッドで粘っている方もいらっしゃいます。ベッドでゴロゴロして眠れない時間をすごすことは、「なかなか眠れない」という失敗した認知を強めてしまいます。
むしろ睡眠時間は、ギリギリまで絞ってしまったほうがよいです。そして眠れないときは、粘らずに睡眠薬を使ってしまったほうが不眠はよくなります。
睡眠時間を5~6時間にしぼってデッドラインを設定し、その時間までは自然な眠気が生じたらベッドに入るようにしていきます。その際にお薬を使っていただき、それでも眠れなければ頓服をすぐに使ってください。
このようにして、ベッドに入れば眠れるという認知を作っていくことが大切です。
その他にも、睡眠に良い生活習慣があります。睡眠に関する正しい知識を理解して、生活で取り入れられることは意識していくことが大切です。詳しく知りたい方は、不眠症(睡眠障害)のページをお読みください。
ユーロジンの運転への影響
睡眠薬は、原則的にすべてのお薬が運転や危険作業が禁止となっています。
これは眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためです。そういったリスクがある以上は、製薬会社も「運転禁止」とせざるを得ませんでした。
ユーロジンの添付文章でも同様に、
本剤の投与により、その影響が翌朝以後に及ぶことがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。
という表現となっています。
しかしながら、不眠のままで運転する方が悪影響があるかもしれませんし、薬を服用したら運転禁止とするべきかは悩ましいところです。運転できないことが、社会生活の妨げになってしまうこともあります。
自己責任にはなりますが、お薬を服用しながら運転されている方もいるのが実情です。ただし、
- はじめて使ったとき
- 量を増減させているとき
- 体調不良を自覚したとき
は無理をせず、運転は控えていただいたほうがよいです。
ユーロジンによって眠気が翌朝に残るようであれば運転は行わず、主治医と相談して作用時間の短い睡眠薬への変更を検討してください。
ユーロジンの妊娠・授乳への影響
ユーロジンの妊娠への影響を見ていきましょう。ユーロジンのお薬の添付文章には、
妊娠中の投与に関し、安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。
このように記載されています。
妊娠への影響を考えていくにあたっては、
- 奇形をおこしやすいか(催奇形性)
- 薬の成分が胎児に届くことによる影響
を考えていく必要があります。
ユーロジンなどの睡眠薬はこれまで、口唇口蓋裂のリスクが高くなるといわれていました。しかしながら因果関係がないとする報告もなされており、奇形を引き起こすリスクは低いと考えられています。
ユーロジンは出産後に気を付ける必要があり、出生直後に赤ちゃんに離脱症状が生じてしまうことがあります。また、赤ちゃんに鎮静作用が強くでてしまい、生まれた後に元気がないこともあります。産科の先生にお伝えしておけば、過度に心配しなくても大丈夫です。
次に、ユーロジンの授乳への影響をみていきましょう。ユーロジンのお薬の添付文章には、
授乳婦への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合は授乳を避けさせること。
このように記載されています。
母乳を通して赤ちゃんにお薬の成分が伝わってしまうことが、他のベンゾジアゼピン系のお薬で確認されています。ユーロジンでも同様に母乳に移行してしまうと考えられ、赤ちゃんがユーロジンをわずかに服用しているのと同じになります。これによって眠気が強まり、哺乳が不十分になることがあります。
しかしながら母乳で育てることは、赤ちゃんにも非常に良い影響があるといわれています。生後まもなくは頻繁に授乳することになるので、睡眠薬は使わない方が多いです。落ち着いてきたら、ご自身の判断で服薬を再開される方もいらっしゃいます。
ユーロジンは作用時間が長めの睡眠薬ですので、少しでも赤ちゃんへの影響を減らしたいのであれば、作用時間の短い睡眠薬にされたほうが良いかもしれません。
海外の妊娠と授乳に関する基準
海外の妊娠と授乳に関する基準をご紹介します。
- 妊娠への影響:FDA(アメリカ食品医薬品局)薬剤胎児危険度基準A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
B:ヒトでの危険性の証拠はない
C:危険性を否定することができない
D:危険性を示す確かな証拠がある
×:妊娠中は禁忌 - 授乳への影響:Hale授乳危険度分類
L1:最も安全
L2:比較的安全
L3:おそらく安全・新薬・情報不足
L4:おそらく危険
L5:危険
ユーロジンは、FDA基準で「×」、Hale分類で「L3」となっています。妊娠や授乳に関しては、海外での評価が厳しくなっています。
ユーロジンは古くから発売されており、また作用時間も長めのため、胎児や新生児への影響が大きいと考えられていたのかと思います。
ユーロジン錠のジェネリック医薬品(エスタゾラム錠)
ユーロジンは、1975年に発売されたお薬になります。
お薬の開発には莫大なお金が必要となるため、発売から10年ほどは成分特許が製薬会社に認められて、独占的に販売することができます。これが先発品になります。
そしてユーロジンのジェネリックは、この特許が切れた後に発売となりました。このため、後発品と呼ばれます。ベンザリン錠のジェネリックとしては、一般名(成分名)のニトラゼパム錠となっています。
ジェネリック医薬品になると、異なる製薬会社が製造を行います。これらのお薬は有効成分は同じですが、効き方は微妙に異なります。というのも、お薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。
ですがジェネリック医薬品は、先発品と同じように効果を示すための試験をクリアしていて、血中濃度の変化がほぼ同等になるように作られています。
ユーロジンは即効性を期待するお薬なので、理論的には大きな差がないとしても、効果に違いを感じる方はいらっしゃいます。その場合はもちろん、先発品を使っていくことも可能です。
【参考】ユーロジンの作用機序
それではユーロジンはどのようにして効果を発揮するのでしょうか。その作用メカニズムを詳しくお伝えしたいと思います。
ユーロジンは、ベンゾジアゼピン系に分類されるお薬です。睡眠薬として現在よく使われているのは、非ベンゾジアゼピン系とベンゾジアゼピン系がありますが、この両者はどちらも基本的には同じメカニズムによって睡眠効果が期待できます。
どちらもGABA-A受容体(ベンゾジアゼピン結合部位)に作用します。それによってGABAの働きが強まり、脳の活動を抑えることで催眠作用をもたらします。
ベンゾジアゼピン結合部位には3つのサブタイプがあり、脳などの中枢神経にはω1とω2の2つが中心に分布しています。それらのサブタイプに対して、
- ベンゾジアゼピン系:ω1+ω2
- 非ベンゾジアゼピン系:ω1
として作用するという違いがあります。それぞれのサブタイプは、
- ω1:催眠作用
- ω2:筋弛緩作用・抗不安作用
が期待できます。
このため、ユーロジンなどのベンゾジアゼピン系睡眠薬は広く作用し、筋弛緩作用や抗不安作用があります。
【参考】GABAの作用機序と効果
睡眠薬は、GABAの働きを強めることで効果をもたらします。
GABAはリラックスさせる物質として、GABA入りのチョコレートなど食品でもアピールされたりしています。食品やサプリメントとして摂取しての効果はエビデンスは乏しいですが、脳内ではGABAは重要な役割を果たしています。
GABAは神経伝達物質として、脳内での情報の受け渡しをしています。神経細胞の活動を抑える方向に働く、抑制性の伝達物質になります。
GABA-A受容体には、Cl-の通り道(イオンチャネル)があります。GABAはこのCl- チャネルを開き、それによって神経細胞の中にCl-が入ってきます。マイナスのイオンが入ってくるので、細胞の中が電気的にマイナスになります。
神経細胞は、細胞の中が電気的にプラスになることによって興奮して活発になります。このため電気的にマイナスになるということは、神経細胞が興奮しにくくなるということになります。
ですからGABAは、Cl-チャネルを開いて神経細胞の興奮を鎮める作用が期待できます。なお、睡眠と覚醒に関わる物質を整理すると、以下のようになります。
カテゴリー:ブログ 投稿日:2021年5月19日